しばらく歩くと、目に白以外の色が飛び込んできた。
「わ!お店だ!」
なんと、雲の上に喫茶店がある!
オープンカフェ、というのだろうか。店の外には木製のテーブルと椅子が何席が出ており、青と白のパラソルがかかっている。
お店自体も、ロッジ風の可愛らしい感じで、窓には色とりどりの花が飾ってあった。
「すごいー雲の上にほんとにお店があるー」
「ここの紅茶は結構美味いよ、あとケーキと」
「ケーキ!」
わーケーキがあるのか…!ケーキを食べるなんてどれだけぶりだろう。
「あ、でも私お金持ってないよ!」
ガーン、目の前にケーキ(とお茶)があるのにー
「あはは、ミチハはお金なんていらないよ!ここは夢の中だぜ?」
「う、あ、そうか……そうだね」
タダとはラッキーだ。
「せっかくだから、外で飲もうか」
ちょこちょこと歩くヤツキの後について、オープンテラスの席に座る。
すると、
「いらっしゃいませ~」
カラランッとドアベルの音を鳴らして、店員さんがでてきた。
「か、かわいいっ}
思わず小さく叫んでしまった。
お盆を持って出てきたのは、なんとタキシードを見につけた犬だった。
ちゃんと二本足で立っている。
結構大きな犬で、ふさふさした長い毛をしている。確か、ゴールデンレトリバーとかいう種類じゃなかっただろうか。
「おや、これはこれは!姫ではありませんか!」
テフテフとやってきた犬のウエイターさんは、ニッコリと笑った。
優しそうな微笑みだ。
「こちらがメニューになります。久々のお客さまで、嬉しいです」
「ひ、久々ですか……」
「なんせ雲の上ですからねえ」
そんな、雲の上でめったにお客も来ないのに経営は成り立つのだろうか。
メニューを開くと、結構豊富だ。
「わー」
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルを鳴らしてください」
そう言うと、犬のウエイターさんはまたテフテフと歩いて行った。
スゴイ、紅茶の名前がいっぱい。
「ヤツキ、紅茶っていっぱい種類があるんだねえ」
話しかけてふと目を上げると、なんだかヤツキが微妙に不機嫌そうな雰囲気を出している。
「ど、どうしたの?」
「だってミチハがかわいいって。俺のが可愛いのに」
「え?」
「俺も犬になるかな…」
ひょっとして、さっきウエイターさんにかわいいって言ったことだろうか。
「え、その格好も可愛いよ。ワオキツネザルって面白いね」
慌ててそう言うと、途端に機嫌が直った。
「フフフーそうだろそうだろ。ちゃんとミチハの好みを調べてるんだからな。あ、ミチハどのケーキにする?」
……ヤツキは結構単純なんだな。
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