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日々たれながし
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世間ではハッピーハロウィーンということで、短いですが閻魔と鬼男君の会話文です。
友人に送ったメールの再利用。


以下反転します。


閻:さあ、今年もやって参りました嬉し恥ずかし☆ウキウキハロウィーン!ではさっそく!鬼っ男っく~んv
鬼:トリックオアトリート!!
閻:早っ!?まだ何も言ってないのに~
鬼:毎年毎年この時期はあんたに痛い目に合わされてばかりでしたからね。今年は先制攻撃させてもらいました。
閻:えー、痛い目っていうかむしろ気持ちいい目だと…
鬼:うるさい黙れ。
閻:ひっ、はい………
鬼:まあ、というわけでお菓子があるならさっさと寄越してください。でないといたずらしますよ。
閻:ちなみに、いたずらって例えばどんな?
鬼:そうですね。1、爪で頭を縦に刺す。2、爪で頭を横に刺す。3、舌を引き抜く。4、やっぱり爪で胴体を縦に裂く……
閻:いたずらってレベルじゃねえぞ!?ななななにそれ鬼男君っっいたずらというよりむしろ処刑方法みたいなんですけど……っ
鬼:それほど僕の積年の恨みが深いということです。
閻:そ、そんなに嫌だったの……?
鬼:さあ、お菓子を持っているものなら出してみやがれ。
閻:ぜ、全力で探さないと!!ええと…ええと…っ(ごそごそ)
鬼:じゅーう、きゅーう、
閻:カウントダウン始まってる!?ひえええっ……………あったーー!!
鬼:ちっ
閻:ちって!今ちって言った!
鬼:気のせいですよ。それで、何があったんですか?
閻:飴ちゃん一個……
鬼:しけてますね。まあ、許してあげましょう。
閻:あ、ありがとうございます……?
鬼:もぐもぐ。いちご味ですね。
閻:よし!じゃあ今度はこっちの番だな鬼男君っ!トリックオアトリート!!
鬼:はい。
閻:えっ
鬼:お菓子です。うまい棒。良心的価格で色んな味が楽しめます。現世で絶賛発売中。
閻:なん…だと……
鬼:さあ、ではお仕事始めましょうか!
閻:うわあああああん!?

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今日からこのサイトにおける受けキャラはすべて『男の娘』になりました☆
どんどんぱふぱふワーッ!!やったネーーーッ!!
うちにおいでくださっている方々は、どうぞ広いお心を持ってご了承くださいますようお願いいたします。

……といきなり言われても、きっと戸惑われることだと思います(笑)
えと、本日より当サイト松月堂ぽんちの男性受けキャラ達はみんな男の娘キャラになりました~
男の娘というのは、『明らかに女の子にしか見えない男の子』のことです。
日和も、P4も、リボもGDも全部男の娘となります。
急な方針転換スイマセンっ; で、でもやってみたかったんです~っ
改めて、リニューアルした松月堂ぽんちをよろしくお願いします!

まあ、私としても初めての試みなので不安なところ満載なんですが…(どきどき)
ど、どうなるかなー;
そこで、ちょっと試しにミニミニ文を書いてみました。
今後は、このような感じでやっていきたいと思います(笑)よろしくお願いします。
天国組です。以下反転します~



『鬼の秘書は男の娘!?』

オレは、執務机に頬杖をついて、じーっと自分の秘書を見上げた。
表情を引き締めて手元のファイルを繰る彼は、いつ見てもスッと背筋を伸ばしていて姿勢が良い。
どれだけ見ても見飽き足らない、オレの秘書。
猫を思わせるちょっとつり上がり気味の大きな金色の瞳。長い睫毛。
小さな鼻に、思わずしゃぶりつきたくなる様なふっくらとした唇。
細い顎。
滑らかな褐色の肌に、さらさらとしたショートの髪が映える。
「鬼男君ってさあー」
「はい?」
オレのぼそっとした呟きに、鬼男君が顔をあげてこっちを見た。
綺麗な金色の瞳がこっちを向く、それだけでドキリと心臓が高鳴る。
「あ、あのさ……」
「何ですか」
鈴を転がしたような優しげな声。
オレは頬から手を離して、姿勢を正した。オレのただならぬ様子を察してか、鬼男君も真面目な顔をしてオレの方にちゃんと向き直ってくれる。
段々脈が早くなる気がする。本当は、オレの体なんか死体同然で、血液は一応巡ってるんだけど体温は低くて、肌は冷たい。
だけど、君がオレを見てる。それだけで、なんだか体中が暖かくなるような気がするんだから、不思議だ。

「鬼男君って、ちゃんとち○こ生えてる?」

「セクハラアアアアアアアアァアアアアアアッッ!!!」
「どぶぁーーーーっっ」
途端に鉄をも切れる鋭い爪がオレの脳みそを貫いた。
あだだだだ、出ちゃう出ちゃう!中身出ちゃうから!!
鬼男君は細い腕を震わせ、大きな瞳を怒りで潤ませながら(怒ってても凄く可愛い)、ギリギリと眉をつり上げた。
「な・に・を・突然セクハラ発言をかましとるんじゃこのエロ上司がーーーっっ!?このままお前の頭蓋骨パッカーンってしてやってもいいんだぞアァン!?」
「ひええええええスイマセンスイマセンもう言いませんっっ!!」
ドスを利かせた可愛らしい声に、オレはゾッと震えあがって降参した。
この見かけによらず荒々しい性格をした秘書なら、たとえ上司といえど間違いなくやる!!躊躇なくやる!!という確信がある。
鬼男君は両手をあげてあられもなく悲鳴を上げるオレに、鬼男君はチッと舌うちをして爪を引き抜いた。
「今度言ったら本気でするからなっ」
「はい……」
しゅんと俯くオレの顔から、見る見るうちに傷痕が無くなる。
鬼男君は落としたファイルを不機嫌そうに拾い上げながら、じろっとこっちを睨みつけた。
「僕は、れっきとした男ですから。まったく、僕のどこをどう見てそんな発言に至ったんだか」
「え、ええー」
オレはぽかんと口を開けた。
ぷりぷりと怒る鬼男君の肌はつやつや。髪はさらさら。なにやら良い匂いもする。
小柄な体型も相まって、どっからどう見ても美少女だ。
彼に初めて会った時は、彼の履歴書を何度も確かめたものだ。今流行りの僕っ娘というやつかと思って。
しかし、薄っぺらい紙の上には確かに『性別:男』と書いてあった。
(だけどなあ~)
彼がオレの秘書に成ってから、わりと長い年月が経ってるけど。
彼が側にいるだけで、彼の声を聞くだけで、彼の瞳がオレを映す、それだけで。
オレはどきどきそわそわふわふわしてしまうのだ。
だから、もし彼が女の子だったら~とオレが期待してしまうのもしょうがないじゃないか?
男同士だとますますハードル上がっちゃうし…。
外見はどう見ても女の子なんだから。
(それにしても、彼のこの自分の容姿への無自覚っぷりは一体何事だろう)
鬼男君はどうも自分が美少女風の外見をしているという意識はこれっぽっちもないらしい。鏡を見たことはないのだろうか。
まあ、でも。
分かってないなら分かってないで、付け入る隙があるかな、とも思うのだ。
「……何ニヤニヤしてんですか、気持ち悪い」
「べつにー?さっ、お仕事お仕事!」
「あんたがお仕事って!本当に熱でもあるんじゃないですか?」
そんな失礼なことを言いつつ、鬼男君は首を傾げて扉をあけにいった。
さあ、今日も冥界の日常が始まる。




案の定、冬編の続きは間に合わなかったので、予告した通り以前友人にメールで送った冥界小話を置いておきます~
篁さんもいます。すいません。
夕方から、しn~むにゃむにゃ旅行に出発します。
あばばばばばbどうしよどうしよひょーーー
飛ぶぜ…おいら飛ぶぜ…っ!

拍手ありがとうございました!!
とってもとっても励みになります。読んでもらえたんだな、しかもちょっとでも喜んでもらえたんだなあ~と思うとホッとします。ありがとうございました!




『花を植える』


『何の変哲も無い日々』という言葉を地でゆく冥界。
今日もまた、世もなべてこともなしという表情で、篁は閻魔庁の廊下を歩いていた。


今はちょうど閻魔が昼の『お務め』を行う時間であり、他の職員にとっては小休憩できる時でもある。『人を裁く罪』に対する罰を受ける時。
篁は資料室から午後の裁きの為の資料を持ってくる途中だった。
別に第二秘書である篁がわざわざ用意しなくてもよいのだが、暇潰しも兼ねて自分で動くことにしたのだ。唯一の上司のことを考えるとなんとなくじっとしていられなかったということもあるし、第一秘書の姿が見えずにつまらなかったということもある。

ついでに遠回りでもしようと思い、普段通らない閻魔庁の外側の廊下を通って執務室へ戻ることにした。壁がなく、手すりだけがあるこの廊下からは、冥界のがらんとした、荒涼たる大地がよく見える。
何の気なしに歩いていると、ふと目の端に酷く心に引っ掛かる色が映って、篁は足を止めた。
数歩戻って欄干の向こうを覗き込む。
「………何をしてるんだい、鬼男殿」
「!?」
急に声を掛けられ、驚いたのか第一秘書の肩がびくりと動いた。
「た、篁さんっ?」
焦ったように顔を上げたのは、休み時間になるなり姿を消した鬼男だった。
地面に蹲っていた鬼男は、何やら土を弄っていたらしい。よく見るとその両手は泥で汚れてしまっている。
「……畑仕事?」
篁は思わず目を瞬かせて尋ねた。
鬼男の足元には数メートル四方に渡って土を掘り返したような跡がある。
「いや、あの、これはっ」
顔を赤らめ慌てて手を横に振る鬼男。だが、すぐに諦めたように肩の力を抜いた。
「ううう……何でこんなとこ通ってるんですか、篁さん……」
「いや、たまたま……ひょっとして秘密の場所だった?」
「秘密というか……」
鬼男は困ったように足元を見下ろした。
「……ええと、花でも植えようかと思って……」
「花?」
首を傾げた篁に鬼男が差し出した手のひらの上には数粒の小さな種が転がっていた。
「大王には黙ってて下さいね」
言うと鬼男は再び蹲り、赤茶けた土の中に花種を埋めた。
そんな鬼男を見て篁は内心首を傾げる。
花が育つには冥界は厳しい場所だ。
三途の川の付近なら花畑も広がっているけれど、ここいらは雨が降ることなどなく、こまめに水やりをしなければならない。
土も固いし、お世辞にも園芸に向いた環境だとは言えないだろう。
そんな篁の訝しげな気持ちが伝わったのか、鬼男は苦笑するように唇を緩めた。
「……なんか、悔しかったので」
呟き、荒れた大地を爪先で掘る。
「冥界は、大王そのものですから。あんなにボケナスで、能天気で、いっつも腹立つくらいヘラヘラしてるくせに、一度目を転じてみれば見渡す限り何もない土地が広がっている。それが、何となく……」
悔しかったのだと。
そう言って目を細めて遠くを見る鬼男。
その脳裏には、おそらく彼の人の姿が浮かんでいるのだろう。
今この時、熱く焼けた銅を喉に通し、内臓を焦がし、冥界の罪を一身に背負うている人の姿が。
――自分たちとて、同罪だというのに。
なのに、冥界の王ばかりが罪を問われ罰を受ける。
こればかりは、どうすることも出来ないのだ。
もどかしくても、痛々しくても、黙って耐えるしかない。笑って戻ってくるあの人を、やはり笑顔で、何事もないように迎え入れるしかないのだ。
自分でさえこんな思いになるのだから、鬼男などどれほどの辛い気持ちを飲み込んで彼を待っているのだろうか。
毎日、毎日。
篁はもう一度、鬼男の足元を見下ろした。
この広い冥界の大地の中で、本当にほんの少しだけ、耕され種を植えられた地面を。
突然、篁は床に荷物を置き、おもむろに欄干に手をやって、ひょいっと飛び越えた。
ぎょっとする鬼男の前に着地すると、同じように踞る。
そして、土を手で掘り返し始めた。
「た、篁さん?」
「……うん、確かに。言われてみれば悔しいよね」
固い地面を、少しずつ柔らかくする。
根が、伸びますように。
花が、咲きますように。
「一人より、二人だと思わない?」
おどけて肩をすくめてみせると、戸惑っていた鬼男がきょとんと目を瞬かせ、そして微笑んだ。
「……そうですね」
「もうさ、大王様が目んたまひん剥いて腰抜かすくらい、巨大な花畑作ってやろうか。こっそり」
「あはは」
忙しい日々だけれど、二人でやれば水撒きもできるし、少しは花も育つだろう。
(二人だけの秘密ってのも嬉しいし)
篁は密かに笑う。
いつか、ここには花が育ち、見違えるようになるだろう。そ
うしたら、この場所を見て、閻魔はどう思うだろうか。
驚くだろう。喜ぶだろうか。それとも、自分に黙ってこっそり二人で作業をしていたことを怒るだろうか。
(焼きもちやきだから)
その時の顔を思い浮かべると、少々意地悪な気持ちも加わって、わくわくした。

冥界の、ほんの一画。とてもささやかだけれど、鬼男がその手で花を咲かせてくれた。
口ではなんだかんだ言っても、きっと喜ぶだろう。
その日の為に、今また一粒、ここに花の種を植える。


「やっほーーー!!鬼男君ハッピーハロウィーーーンッ♪」
「おわあっ!?なんだお前キチ○イか!?」
「辛辣すぎるよ!?ちょ、いきなり放送禁止用語で罵るってどういうこと」
「誰だって『ちょっと待っててねv』つって仕事中ふらりといなくなった上司がそんな格好して戻ってきたら思わず口も滑りますよ」
「そんな格好って……正統派吸血鬼スタイルだよ?ほーらキバキバ。マントマント」
「はあ……なんだってまたそんなすっとんきょうな格好してきたんですか。言っときますけど冥界でめっちゃ浮いてますよ」
「うっ……だ、だって今日はハロウィンじゃないか!」
「……ハロウィン……?」
「………え?ひょっとして、ハロウィンって知らない?」
「すいません、勉強不足で」(←※学園日和前です)
「ハロウィンっていう、秋の収穫を祝ったり悪霊を追い出すお祭りなんだけどね。そのときに、カボチャをくり抜いてランタンを作ったり子ども達が仮装して家々を訪ね歩いたりするんだよ。『Trick or Treat?』って言いながら。お菓子をくれなきゃいたずらするぞってね」
「へー」
「というわけで、Trick or Treat!」
「……ちょっと待ってください。お菓子をあげないとどうなるんですか」
「そりゃあもちろんいたずらするよ!!性的な意味でな!!
「それか!それが目的か!!」
「くっくっく、さあどうする……?いたずらを回避したければお菓子を与えるんだな…!まあ、持ってるわけないよねーっ、ハロウィーンも知らなかったんだもんねーっ♪」
「くそっ、汚ねえぞ!ってゆーか、それは子どもがする問いかけなんじゃないですか!?実年齢不明のオッサンがするもんじゃねーだろ!」
「ふふ~ん、鬼男君へいたずらするチャンスのためなら、オレはいつだって『僕8歳デス☆』と答える覚悟がある!!」
「駄目だ!こいつ本当駄目だ!!」
長い時を生きる中でどうやら恥という大事なものをどっかへ置いてきてしまったらしい上司を前に、鬼男は焦って唇を噛んだ。
頬を一筋の汗が流れる。
このままではいたずらされてしまう…っ
(どうすべきか……)
調子にのった閻魔のえっちはしつこいので遠慮したい(ヒドイ)。
得意満面顔の閻魔もムカつく。
(こうなったら刺し違えてでも奴を倒すしか!!)
鬼男が男らしい決意を固めたとき。
「おや、鬼男殿。お困りのようですね」
通りすがりの篁がするりと鬼男の手に小さなチョコを落としていった。
「!!」
「!?……た、篁このやろーーーっ!何すんだ!」
「ふふふ、私はこんな時のためにここで働いてるんですよ!ああ楽しい(笑)」
高笑いしつつ去ってゆく篁の背中に感謝の視線を送り、鬼男は会心の笑みで閻魔と向き直った。
「さあ、お菓子はありますよ!いたずらは勘弁してもらいますからね!」
「うう………っ」
閻魔は突き出されたチョコにくしゃりと顔を歪めた。期待していた分ガッカリ感も強い。
(せっかくいたずらできると思ったのにー)
第二秘書への恨みを胸に刻みつつ、肩を落とす。
「………」
あまりにしょんぼりとした様子に、鬼男は、何とも言えない気持ちになった。
呆れたような、可哀想なような、嬉しいような、むずかゆい気持ち。
鬼男は、手の中の小さなチョコを見て、黙って包みを解いた。
「あーん」
パッと顔をあげてきょとんとした顔をする閻魔の口元にチョコをつまんで近づける。
途端に笑顔になる閻魔。
「えへへ」
ぱくりとチョコに食いつく閻魔に、鬼男はため息をついて見せた。
「気は済みましたか?……ってゆーか今仕事中だボケェッ!さっさと着替えてこい!!」
「むぐはーい」
怒声を浴びながら、慌てて走り出す。
口の中には、甘いチョコ。
解けるのが少しもったいない。

大きな丸い太陽が、形を歪めて西の空に沈み行こうとしている。
私たちはその光を正面に受けながら、ひたすら足を動かしていた。
額が熱い。
日暮れまでに目的の村まで辿りつこうと、少し早足だ。
「ううう、曽良君~~~っ、もちょっとゆっくり歩いても大丈夫だって~~」
「芭蕉さんに付き合って今夜も野宿するつもりはないんです。置いていかれたくなかったらとっとと歩いてください」
弟子はつれない言葉を振り向きもせずに投げかけると、そのまま黙々と進んでゆく。
前ばかりを見て。
小憎らしい。
それなら、と私は先ほどからの『遊び』を再開する。
夕日に伸ばされた、長い長い影。
前を歩く弟子の影を、私は力を込めて踏む。
目の前に伸びた、影の頭。それを、長旅の土埃ですっかりくたびれた草履で踏む。
踏みながら歩く。
『影踏み鬼』だ。
鬼ごっこの一種で、鬼は相手の影を踏んで捕まえる。
鬼に捕まった者はどうなるだろうか?
そう、食われるのだ。
彼は振り向かない。この遊びに気づかない。
だから、私はずーーーーっと前から鬼のままだ。
力を込めて足を下ろす。

―――ざり。

足の下で土が鳴る。地面を踏みしめる。
一つ足を下ろすごとに、私は彼を捕まえる。そして、彼の影を捕まえるたびに、少しずつ彼を食らうのだ。
何度も何度も影を踏み。
何度も何度も彼を食む。
(私は、まだ影しか食べられないけれど)
以前から、私の中で彼に対する濁った感情が徐々に膨れ上がってきているのが分かった。
独占欲、支配欲、彼を己のものにしてしまいたいという欲情。
だから、旅の供に彼を選んだ。
常に同じ時間を共有しなければならない二人旅なら、彼の時間を独り占めできると思った。
けれど、困ったことに、少しもこの感情は収まる様子をみせようとはしない。
彼が誰かと言葉を交わすのを見るたびに、美しいものに目を細めるたびに、じりじりとした思いが胸を焦がす。
離れがたく。
彼の温度を感じたく、彼の言葉を聞いていたく。

(ああ、もしもこの身が真に鬼であったなら)

(影ごと彼を一口に食べてしまって)

(後は何も受け入れず、静かに飢えて朽ちることができるものを)

「―――芭蕉さん?」

ふと、前を行く曽良の足が止まった。
少し振り返る彼の顔は、逆境でよく見えない。
私は慌てて口元に浮かんでいた笑みを消す。
(彼は気づいただろうか?)
小さな期待と大きな不安。
「………村が見えてきましたよ」
前方を示す彼の指。その先には、夕餉の支度かふわりとたなびく白い煙。
(気づかれなかった)
大きな失望と小さな安堵。
「わしょーーーいっ!もう芭蕉へとへとだよ!早く行くぞ曽良君っ!」
とたんに元気を取り戻したように、私は足を速めて弟子の前に出た。そのまま早足で歩く。
背中に、じっと注がれる曽良の視線を感じる。
どこか、訝しそうな。
だがすぐに、歩みを再開する音が聞こえてきた。
私は再び口元に笑みを浮かべる。
(もしも、気づいたら)

そしたら、その時こそようやく。

(私は鬼になれるのだ)

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