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日々たれながし
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ひらりひらりと桜が舞う

屋敷の桜を、二人で見上げる。

ちらちらひらりと桜が降る

光也の目に映っている桜と、僕の目に映っているそれとは同じだろうか、とふと思う。
同じならいい。
光也の、黒い宝石のような目が、ぽかりと開いて桜の舞い降るのを見上げている。
薄ピンクの、圧倒的な美。
ふいに、風が強くふいて、ざああと桜が鳴った。
くるくると舞う桜の花びら。
「光也!」
急に光也がどこかに消えてしまいそうな気がして、慌てて腕を掴んだ。
驚いたように、光也が振り返る。
「な、なんだよ?」
「いや……なんでもない」
確かに腕の中にある感触にホッとして、バカなことを考えたと苦々しく思う。
彼が、まるで桜に連れ去られてしまうような気がして。
「変な奴だなあ」
呆れたように見る光也は、やはりいつもの光也で。
安心して手を放す。
「あ、光也。頭に花びらがついてるぞ」
「ああ」
ブンブンと頭を振るが、黒髪に絡んでなかなか離れようとしない。
必死な様子に笑って、手を伸ばした。
「動くな、今取る」
「悪い」
そっとつまんだ花びらに、唇を寄せて、風に飛ばした。
ちらりと光也を見ると、予想通りにカアッと赤くなっていて思わず吹きだした。
「バッカやろう、そんなキザなことすんな!」
「あはは」
「笑うなーーー!」

ひらりひらりと桜は舞う

光也。
あれから、何年。
何十年経っただろうか。
僕は、一人で。
幾度も幾度も桜が咲き、舞い、散るのを見た。
そのたびに、かすんだ思い出がほのかに甘く、苦く、懐かしく思い出される。
あのとき手を放さなければ、お前はまだ側にいただろうか。
お前と交わした約束の時まで、あとどれくらいだろう。
『また、一緒に見ような』
そう笑った君と、
また、いつか、共に桜を見られる日を、
今はただ静かに待っている。

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