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日々たれながし
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紅茶は、ヤツキのお勧めのやつと、ケーキは私がチーズ、ヤツキはガトーショコラにした。
ウエイターさんが「ごゆっくり」とそれぞれの前に置いてくれる。
パクリ、と一口食べる。
うわあ……!これは…うまっ
「わーしあわせだー」
思わず二マーッと頬が緩んでしまう。
「よかった」
ヤツキは、両手で紅茶のカップを持つと、ちょこちょこと飲んでいる。やっぱり可愛いなあ、ワオキツネザル……
でも。
「ねえ、ヤツキ」
「なんだい?」
「どうして、……その……ヤツキはそんな格好なの?」
「!? やっぱりワオキツネザルは嫌いか?」
「や、ちが!そうじゃなくて……」
「何でも好きな格好になれるよ。ミチハが望むように」
確かに、ヤツキは前回は魚だった。犬にも、何にでもなれるんだろう。
「それじゃ、人間にも?」
「………」
ヤツキは、ちょっと言葉に詰まったかのように黙ってしまった。
前回、夢から覚める前。一瞬だけ、人の姿のヤツキを見た。
なんとなく、………なんとなく、あれがヤツキの本当の姿なんじゃないかなと思うのだ。
「……なれるよ」
「じゃあ、どうしてならないの?」
「……ミチハが、人を嫌いだから」
今度は私が言葉に詰まる番だった。
「嫌われたくないからな。警戒されたくないし」
ヤツキは、静かにカップを机に置いた。
「………でも、ヤツキなら、大丈夫だと思う」
「本当か?」
「多分」
ふうっと、ヤツキがため息をついた。
そして、私が瞬きをした次の瞬間。
そこには一人の人間の男の人がいた。
この間、一瞬だけ見た人。銀色の髪に、蒼い瞳。
でも、なんだかこちらの反応を窺うような感じでちらちらと見上げている。
「………うん、平気」
「お、マジで!」
私がそう言った途端、ヤツキはパッと顔を明るくさせた。
「よかった~……やっぱ、この姿がどちらかというと本性だからさ。ちょっと楽なんだよな、使いやすいし」
「そっか」
ニコニコ笑うヤツキは。
こないだもちょっと思ったんだけど……ううう……や、やっぱりスゴイ美人さんだ!!
目も覚めるような、というだろうか。こんな綺麗な人は見たことない。
肌すべすべそー銀色の髪も蒼色の目も凄く綺麗。
迫力だー眼福~
やっぱりちょっと緊張するかもしれない。
でも、こちらを向いてへにゃっと笑う彼は、やはりヤツキで。
私も嬉しくなって、笑った。

「美味しかった~!ごちそうさまです!」
夢の中でこんないい思いしていいのだろうか。というくらい、美味しかった!
これでお客さんがめったに来ないなんてもったいない。
「姫に、そう言っていただけるなんて、光栄です」
「あの~…やっぱり、申し訳ないし、なんとかお金……」
「そんな!姫からお代金をいただくわけにはまいりませんよ、どうかお気になさらず」
「でも」
そうごたごた言っていると、ヤツキが
「まあまあ、お前がそんなに気に入ったのなら、この店が潰れることはねえよ」
「そ、そうなの?」
「そうなのそうなの」
そんなものなのか。でもなんだかそれを聞いた途端、ウエイターさんがこっそりガッツポーズをとったような?
そんなことを話していると、突然、
ぐにゃりと視界が歪んだ。
ああ、これは……
「夢から覚めるんだね」
「そうだよ」
「…………また会える?」
「ミチハがそう望むなら」
その言葉が……どれだけ嬉しかったか。
「またな」
そういうヤツキの姿が掠れてゆく。
また、夜が明ける。


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しばらく歩くと、目に白以外の色が飛び込んできた。
「わ!お店だ!」
なんと、雲の上に喫茶店がある!
オープンカフェ、というのだろうか。店の外には木製のテーブルと椅子が何席が出ており、青と白のパラソルがかかっている。
お店自体も、ロッジ風の可愛らしい感じで、窓には色とりどりの花が飾ってあった。
「すごいー雲の上にほんとにお店があるー」
「ここの紅茶は結構美味いよ、あとケーキと」
「ケーキ!」
わーケーキがあるのか…!ケーキを食べるなんてどれだけぶりだろう。
「あ、でも私お金持ってないよ!」
ガーン、目の前にケーキ(とお茶)があるのにー
「あはは、ミチハはお金なんていらないよ!ここは夢の中だぜ?」
「う、あ、そうか……そうだね」
タダとはラッキーだ。
「せっかくだから、外で飲もうか」
ちょこちょこと歩くヤツキの後について、オープンテラスの席に座る。
すると、
「いらっしゃいませ~」
カラランッとドアベルの音を鳴らして、店員さんがでてきた。
「か、かわいいっ}
思わず小さく叫んでしまった。
お盆を持って出てきたのは、なんとタキシードを見につけた犬だった。
ちゃんと二本足で立っている。
結構大きな犬で、ふさふさした長い毛をしている。確か、ゴールデンレトリバーとかいう種類じゃなかっただろうか。
「おや、これはこれは!姫ではありませんか!」
テフテフとやってきた犬のウエイターさんは、ニッコリと笑った。
優しそうな微笑みだ。
「こちらがメニューになります。久々のお客さまで、嬉しいです」
「ひ、久々ですか……」
「なんせ雲の上ですからねえ」
そんな、雲の上でめったにお客も来ないのに経営は成り立つのだろうか。
メニューを開くと、結構豊富だ。
「わー」
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルを鳴らしてください」
そう言うと、犬のウエイターさんはまたテフテフと歩いて行った。
スゴイ、紅茶の名前がいっぱい。
「ヤツキ、紅茶っていっぱい種類があるんだねえ」
話しかけてふと目を上げると、なんだかヤツキが微妙に不機嫌そうな雰囲気を出している。
「ど、どうしたの?」
「だってミチハがかわいいって。俺のが可愛いのに」
「え?」
「俺も犬になるかな…」
ひょっとして、さっきウエイターさんにかわいいって言ったことだろうか。
「え、その格好も可愛いよ。ワオキツネザルって面白いね」
慌ててそう言うと、途端に機嫌が直った。
「フフフーそうだろそうだろ。ちゃんとミチハの好みを調べてるんだからな。あ、ミチハどのケーキにする?」
……ヤツキは結構単純なんだな。

目を開くと、そこは雲の上だった。
どこもかしこも、真っ白。

「っわああ、落ちる、落ちる!……あれ、落ちない…?」
わたわたとした後で、ふと気付く。
この感覚には覚えがある。これは……
「そうか、また夢見てるのか」
「そうだよ」
すぐそばで、またも聞き覚えのある声がした。
この声は。
キョロキョロと見回す。が……どこにも「彼」の姿はない。
「あれ?」
「ここ、ここ」
ふと視線を下ろすと、真っ白でふわふわもこもこな地面に、ちょこんと銀色の固まりがいた。
保護色で気付かなかった……
銀色の毛に、大きな瞳は吸い込まれそうな蒼。
「こんにちは」
「こんにちは」
「ええと…………ひょっとして、ヤツキ?」
「覚えててくれたんだな!」
そう言うと、長いふさふさした尻尾を持つ変わった生き物はニッコリと嬉しそうに目を細めた。

真っ白な道を一人と一匹、テフテフと歩く。
不思議なことに、雲の上なのに道があり、道端に木々や草花が咲いている。もちろん、全て雲でできた真っ白な植物だ。
「ヤツキ、今日のその……姿は……ええと、なんて生き物?」
「ワオキツネザルだよ」
「ワオキツネザル?」
「キツネザル科。アフリカ南部のマダガスカル島にのみ生息しているキツネザルの仲間。主食は果物や木の葉」
「へえ~」
なるほど。
確かに、言われてみればキツネとサルを合わせたように見えなくもない…かな?
手足が長く、目がくりくりで、シマシマの長い尻尾がふりふり揺れて結構かわいい。
でもキツネとサルは分かるけど、「ワオ」はどっからきたんだろう……
「ミチハ、のど渇いてないかい?お茶にでもしようか」
「お、お茶?」
雲の上で、お茶なんて飲めるんだろうか。
注意!!
これは、ハセユーです。ダークエロです。
裏要素がバッチシ含まれています。
そういった表現がお嫌いな方、苦手な方、年齢が幼い方はご遠慮ください。マジで。

それでは、以下反転…


-------------- ぽつり。

真っ白なシーツに赤い点がぽつんと浮かぶ。

-------------------- ぽつり  ぽつ

一つ、二つ、三つ。
罪の証が増えていく。


『俺、好きな奴ができたみたいなんだ』
稲葉は、少し恥ずかしそうにそう呟いた。
その言葉を聞いた途端、俺の奥の一番柔らかい部分に大きなヒビが入った。
凍りつく視界。
俺は、必死に「いつもの俺」の仮面を被る。
稲葉はボソボソと、いつの間にかその相手が気になってしかたなくなってきていたこと。気がつくと、目で追っていたりするようになったこと、などを喋っている。
俺は、表面的には笑顔で、そんな稲葉をからかったり、祝福したりしていた。
けれど実際には、ほとんど耳に入ってはいなかった。
(どうしてだ?)
もう一人の俺の声がする。
(いつかこんな日が来ると知っていただろう?)
そうだ。
俺はずっとこの日が来ることを覚悟して。
いつか、稲葉には好きな子ができて。可愛い彼女を作って。
俺は、それを心から祝えるはずだった。

ああ、けど稲葉。
俺は、強く強く目を閉じる。
その言葉は、『禁句』だったようだ。

その後、俺はさりげない様子で、稲葉に飲み物を出してきて、
「乾杯!」と二人でコップを打ち合わせて飲んだ。
稲葉は、何の疑いもなく飲み干す。
強力な媚薬入りのジュースを。

そして、今稲葉は俺の腕の中にいる。
俺の腕の中で、泣いて、泣いて、鳴いている。
嗚咽交じりの喘ぎ声。
今までに経験したことのない熱さに、俺のする行為に簡単に反応する体に、戸惑いながら。
きっと脳の中はいまだに混乱したままだろう。
「稲葉」
滑らかな肌に、手を這わせる。
繋がった場所が、熱い。
稲葉、お前、なんて熱いんだ。
「自分が今、どんなカッコしてるか分かるか?」
ゆらゆらと揺らすと、ひっと小さく悲鳴をもらす。
無理矢理押し入った箇所から、赤い雫が、ぽたりぽたり。
涙で濡れた瞳が、尋ねる。
(どうして?)

満足か?と、言われれば、
俺は「満足だ」と答えるしかない。
もう、後戻りができないけれど。
もう、あの笑顔が取り戻せないけれど。
だからこそ、俺はこの先、全身全霊で。何を犠牲にしても。
決してこいつを逃がさない。

夢ならば、なんだか色々なことに納得できた。
特に、隣でプカプカ浮かんでついてくるしゃべる魚について。
魚は、自分を「ヤツキ」だと名乗った。
そして、なんかよくしゃべった。
「うん、戸惑うのも無理はない。けれど、俺がどれだけ君と話したかったかを知ったら、突然の親しげな態度も許してもらえると思うね」
「話したかった?」
「そうだよ、ミチハ」
私は、めったにないこの機会をせっかくだから楽しむことにした。
世界は美しく、目に楽しい。
私は半分泳ぐように、歩くように水中を散歩することにした。
「ミチハ、ミチハ。足元に気をつけて」
「ミチハ、さんご礁のさんごはね、イソギンチャクやくらげと同じ仲間なんだよ」
「ミチハ、疲れた?どっかで休む?」
……とにかく、魚はよくしゃべった。
割と口下手な私の夢にしては、よく口がまわる。しかも、変な知識までもっている。
私は、「うん」とか「へー」とかしか言えてないんだけど。
「ヤツキは、よくしゃべるね……」
「あ、ごめんな。うるさかったか?」
ちょっと心配そうな声を出されて焦った。
「え、う、いや、そんなことないよ。どうぞしゃべって」
「そうかい?」
そう答えたものの、ヤツキはそのあとしばらく黙った。
いかん、ちょっと機嫌を損ねたかな。
そっと顔を覗き込むと、
「俺はね、ミチハ。……実はちょっと……かなりうかれてるんだよ」
「そ、そうなの」
「うん」
浮かれてたのか。そうか。
魚の表情は、常に一定なのでよく分からない。
でも、確かに声はウキウキとした感じだった。
「どうして浮かれてるの?」
「君と会って話せたから」
「………どうしてそんな風に言ってくれるの?」
「俺は、」
魚が何か話そうとパクッと口を開けたとき、
「こんにちはー」「こんにちはー」
小さい、声が聞こえた。
「ん?」
見回すと、小さい熱帯魚の群れがさあっと横切っていった。
口々に、かわいらしい声で挨拶してくれている。
「わ、こ、こんにちは!」
「おっす」
私とヤツキが答えると、
「ひめー」「ひめー」「お元気ですかー」「お会いできてー」「光栄ですー」
小魚たちはくるくると私の周りを何周かすると、またさあっと行ってしまった。
「…………ひめ?」
「挨拶に来たんだな」
「姫って?」
「まあ、この世界ではミチハは姫なんだよ」
「ええええええええ!?」
そんな大それた称号をもらえるほどの者じゃないよ!
あわあわと手を振っていると、突然
ぐわん!!
と世界が揺れた。
「わ、何!?」
「夢が終わるんだ」
「え……」
そうか、もう起きる時間なんだ。
せっかくの美しい世界を離れがたく思って、私はちょっと寂しくなった。
「そっか…なんか、ざんね………え?」
ヤツキを振り返った私の目に映ったのは、魚ではなかった。
そこには見知らぬ青年がいた。
背が高く、白に見えるほどの銀色の髪。
澄んだ蒼の瞳。
その人は、私を見てニッコリ笑った。
「またな、ミチハ」
そして、私が口を開く前に……その世界は、どんどん暗くなって。
手の届かない場所に行ってしまった。

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